学術集会会長あいさつ

第二回日本メディカル学会学術集会の会長を仰せつかりました、瀬々 潤(株式会社ヒューマノーム研究所/産業技術総合研究所 人工知能研究センター)と申します。人工知能(AI)は多様な分野に急速に浸透しています。医療の分野でも例外でなく、診療、治療、投薬等、医学・薬学・保健分野全般に渡ってAI開発が進んでおり、その発展を促進するため、日本メディカルAI学会を設立しました。本学術集会は、その2回目の集会となります。国立がん研究センターを用いて実施された 第1回の集会では700人を超える参加者があり、メディカルAIに対する期待の高さを感じる場となりました。第2回は、この期待を社会実装に繋げ、医療に浸透していく場になれたらと考えています。

さて、本学会で議論されているメディカルAIは、誰のためのものでしょうか?AI開発では、機械学習モデルの議論が多く出てきますが、実際にはモデルだけが重要なのではなく、開発されたAIが医師をサポートし、医師がよりよい診療を考えられる、医師のためのAIである必要があります。それだけでなく、患者も、より良い治療が選択できたり、あるいは、選択肢が広がって自分の意志で予後を含めて治療を選択できる世界・・・AIは患者のためのものでもあります。このように、メディカルAIは医師に寄り添うだけでなく、患者にも寄り添えるものを作るべきだという気持ちを込めて、副題として「AIを医師にも患者にも」とつけました。本学術集会を通じ、どのようなAIが開発可能であるのか、また、どのような開発をすることが、患者のためになるのかをディスカッションし、かつ、早急に社会実装を進めていく機会を提供できればと考えています。

メディカルAIの開発は一本道ではありません。私自身は、医師でも生物学者でもなく、人工知能の頭脳部分である機械学習の手法開発を実施してきたデータサイエンスの研究者です。たとえば、病院で流通するデータを考えると、CT・X線の様な画像データ、ゲノム情報の様な文字列、カルテのような自然言語、心電図の様な時系列データなど多様です。更に、メディカルAIが実装され、浸透するには、機械学習部分だけではく、AI開発で利用できるデータベースが充実すること、診療中にAIを簡単に間違いなく利用できること(ユーザインターフェース)、さらに、そのデータが安心して使えるようにセキュリティーが担保されていることまで、考えるべき要素が情報科学だけでも多々あります。医学の世界も、AIを受け入れるために進化が必要かもしれません。メディカルAIの発展には、すべての分野が「医師のため、患者のため」に同時進化を起こす必要があります。

このような現状から、第二回の学術集会では、第一回の学術集会で集まった日本の叡智を広げ、日本中のメディカルAIに関連する開発者や利用する医師やコメディカルに携わる方々が産学官から広く集まり、垣根なくディスカッションをすることで、一分一秒でも早くメディカルAIが医療に浸透し、一人でも多くの国民を幸せにできる場にできたらと考えています。

瀬々 潤(せせ じゅん)

第2回 日本メディカルAI学会学術集会会長
瀬々 潤(せせ じゅん)

株式会社ヒューマノーム研究所・代表取締役社長
産業技術総合研究所 人工知能研究センター・招聘研究員